第10回 港町・出雲崎で紙風船づくりを体験

北前船の寄港地として栄えた出雲崎。道の駅「越後出雲崎天領の里」で江戸時代の栄華を体感し、大正の頃から漁師まちに広まった伝統の紙風船作りに挑戦しました。

道の駅敷地内の「天領出雲崎時代館」で紙風船作り体験ができます。

間口が狭く奥行きが長い、出雲崎町独特の妻入りの街並みから海岸へ抜けると 道の駅「越後出雲崎天領の里」があります。
敷地内には、江戸幕府直轄地時代の街を再現した「天領出雲崎時代館」、石油産業発祥地としての歴史を紹介した「出雲崎石油館」、物産館や日本海夕日公園などもある観光スポットになっています。

まずは、佐渡金銀の荷揚げや北前船の寄港地として栄えたまちの歴史を、当時の臨場感を味わえる「天領出雲崎時代館」で学びました。

「これはこれは、ようこそ…」と喋る代官ロボットが時代館入り口でお出迎え。

佐渡金銀の荷揚げ港、天領・出雲崎

江戸時代、出雲崎は江戸幕府の財源になった佐渡金銀の荷揚げ港として、代官所が置かれた幕府直轄の天領地でした。

佐渡金銀を運んだ御奉行船(おぶぎょうせん)のレプリカ。

金銀や小判は御奉行船という特別な船で幕府の使者が運びました。 館内では実物の3分の2の大きさに作った御奉行船のレプリカが、金色の飾り金具をつけた華やかな姿で、天井高く葵の御紋の一枚帆を上げています。

越後出雲崎天領の里館長の三輪正さん。

館長の三輪正さんに案内していただきました。
「金銀や小判は北国街道から中山道(なかせんどう)の追分(おいわけ 現・長野県の軽井沢町)を通り、12日くらいかけて江戸へ運ばれました。馬100頭ほどの立派な行列でした。出雲崎には金銀を運ぶ人や馬を提供する『佐州附(さしゅうづき)』の村々があったんですよ。佐州とは佐渡のことです。将軍さまのお墨付きを持った旅はあちこちで優遇されたそうです」。

全国を回った北前船の航路が分かる展示も。

出雲崎は金銀の荷揚げだけでなく北前船の寄港地でもあり、また、北国街道の宿場町として栄えました。 「日本海側の中心港として、越後の米や酒が北海道の昆布や鮭と交換され、大阪や瀬戸内とも交易が盛んでした」と三輪さんは言います。

街には多くの廻船問屋や旅館が立ち並び、多くの人が移り住みました。
当時は建物の間口の広さを基準に屋敷税がかけられたので、どの家も間口が狭く奥行きのある造りになったそうです。妻入りとは、切妻屋根両端の三角形になった壁面に入り口を設ける建築様式。
出雲崎町に今も残る妻入りの家々は、街の風情を醸しています。

出雲崎町の妻入りの街並み。

手仕事で作る紙風船

「天領出雲崎時代館」の館内で紙風船作りに挑戦。

館内では天領時代の商家や職人たちの生活をリアルに再現しており、時代劇のセットのようです。一角で昔懐かしい紙風船作りの体験ができます。
教えてくださったのは生まれも育ちも出雲崎町の丸山紀子さん。10年程前から紙風船作りを実演されています。
「出雲崎は漁師まちです。冬は海が荒れて漁に出られなくなるため、大正時代から内職仕事として紙風船作りが始まったそうですよ」。

紙風船作りのベテラン、丸山紀子さん。

丸山さんも中学生の頃から家で紙風船作りを手伝ったそうです。 「妻入りの家は中が暗いので出入り口側の明るいところで紙風船作りをしてね。まちを歩くとどこの家でも作っているのが見えたものですよ。大切な収入源でした」。

現在、出雲崎町で紙風船作りをしているのは磯野紙風船製造所1社のみ。国産紙風船の国内シェア100パーセントを誇り、材料も国産のものを使っています。同館の体験も磯野さんから材料を仕入れています。

紙風船作りを教わりました。

「手ばり」というやり方で紙風船を作ります。 舟形に切ったカラフルな8枚の和紙や光沢のあるパラフィン紙を、のりしろを3〜4ミリとってずらし、一枚ずつ貼り合わせます。

うまく膨らむか、ちょっとドキドキ。

全部貼ったら底の穴を軽く手で抑え、息を吹き込み膨らませます。
のりの付け方がまずいのか、あちこちで空気がもれているようです。
「大丈夫ですよ。ちょっと直してあげましょう」
と、丸山さんが楊枝でちょいと直してくれました。

より早く、きれいに作るための「器械」があります。

こちらは職人さんが使う台で、先端が弧を描いた金属の棒がついています。
台のことを丸山さんは「器械」と呼び、これを使った貼り方を「器械ばり」と言うそうです。手ばりより早く作れます。
「棒のカーブは八寸(直径約24センチ)の紙風船にぴったりの丸みですよ」と丸山さん。
細い棒の上で紙を合わせ、上から下になぞるように貼ります。
やってみると途中で紙がよれたりして、8枚も貼るのは結構根気がいります。

お椀型にして底と口を貼ります。内職仕事は行程ごとに分業で行うそうです。

体験では一つの紙風船を30分ほどで作りました。

丸山さんは口と底の紙をつける前の行程まで、4時間で100個分貼れるとか。美しい熟練の技です。
丸山さんは今でも内職仕事をされていて、100個まとめて棒に通し、次の行程の職人さんに回すそうです。

館内でさっそく紙風船遊び。

出来上がった紙風船は、早速ポンポンと打ち上げて遊びました。自分で作ったので楽しさも格別です。
「打つと風船がつぶれますが、また口から空気を入れれば、繰り返し遊べますよ」。

ユニークなデザインの紙風船も。

「最近はデザインの種類も増え、外国の方のおみやげにも人気です。日本に昔から伝わる紙風船の遊びを、いろんな方に興味を持っていただけたらと思います」と丸山さんは話します。

港町が歩んできた時代の流れを感じながら、素朴で温かい気持ちになるひとときでした。

紙風船作り体験は要予約、入館料(大人500円、子ども400円)のほかに200円が必要です。

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越後出雲崎 天領の里

開館時間:9時~17時、休館日:第1水曜日(5月、8月は無休)・年末年始

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