第13回 新潟の名物スイーツ「笹団子」作りを体験

笹団子の誕生には「上杉謙信が発明した」、「郷土料理のように庶民の暮らしから生まれた」など諸説あります。新潟の農家では、家にあるくず米を使って団子やおかきなどのお菓子を作っており、笹団子もヨモギの季節に家庭で作られ、庶民の保存食として食べられてきました。笹団子が一躍有名になったのは、昭和39年に開催された新潟国体でお土産として推奨されたことがきっかけと言われています。米俵に似た形は米どころ新潟を思い起こさせ、以来新潟土産の定番となりました。
信濃川左岸沿いにある「田中屋本店 みなと工房」さんでは、平成19年のオープン時から笹団子作りが体験できる「笹だんご講座」(有料)を開催しています。

全面ガラス張りで開放的な外観。体験講座の会場は2階のオープンスペース。

「笹団子を見て、作って、味わえる、体験型ショップを作ったら地域の皆様にも喜んでもらえるのでは?と考えたのが始まりです」と語るのは田中幸江取締役販売部長(みなと工房支配人)。当時、新潟ふるさと村などで笹団子の実演販売をしていた同店には「笹団子の作り方を教えてください」「笹団子の歴史を聞かせてください」という申込みが多数寄せられていたそうです。「お菓子屋さんがお菓子作りを教えて大丈夫?団子が売れなくなるよ」と言う人もいましたが、「地域に恩返しをしたい」という想いが強く、工場の新設を機に「みなと工房」を誕生させました。

「自宅で笹団子を作ることを目標に、料理教室感覚で受講される方も多いです」(田中支配人)

笹団子には500年もの歴史があり、40年ほど前まではどこの家庭でも作られていました。「餡には、つぶあん、こしあん、きんぴらなどがあり、なかでもこしあんに比べて簡単に作れる「つぶあん」は、一番多く作られていました。「お家で作るなら、チーズやチョコレートなどお好みの餡を入れるのも良いと思います」と田中支配人。田中屋本店さんでは県産の食材にこだわり、佐渡の「あらめ」や「くろさき茶豆」を使った笹団子も販売しています。

一番上から時計回りにこしあん、きんぴら、あらめ、くろさき茶豆、つぶあんの餡。あらめは煮付けにして新潟の家庭で食べられている郷土料理。

米どころで生まれ育った餅菓子「笹団子」。腹持ちが良いので「小腹がすいたときなどちょっと食べるのにちょうどよい和菓子です」(田中支配人)。 早速、作り方を教えていただきました。

材料は、①餅粉(もちこ)、上新粉(じょうしんこ)、砂糖、小麦粉、トレハロースを混ぜたもの、②イグサ、③ササ、④あんこ、⑤ヨモギ(左上から時計回りに)※トレハロースはトウモロコシなどのでん粉から作られた天然の糖質。※※餅粉と上新粉の比率は、7:3、その他は適宜。

1. 生地を作る
餅粉、上新粉、砂糖、小麦粉、トレハロースを入れたボウルに用意した水の半分を入れ、粉に水が馴染む程度にざっくりとかき混ぜます。砂糖や小麦粉、トレハロースには、お団子が固くなるのを抑えてくれる効果があるそうです。もっちりしたのが好きな人は餅粉を多めに。モチモチした歯ごたえにするには、粉の比率が大切です。

用意するお水の目安は、粉170gに対して水150cc。

ヨモギを全部加えて、残っているお水の半分くらいを入れよくこねます。同店では、乾燥させたヨモギを使っていますが、自宅で作る場合は冷凍しておいたヨモギを自然解凍して使うのがおすすめだそうです。

ヨモギは水分を取って使用。自然解凍の際は、水分を手で絞ってから使用します。

生地全体がヨモギ色になるまで、時々残りのお水を入れながら約20分、自分の体重をグッとかけて手のひらを使ってこねます。水の代わりにお湯を入れてこねると10分足らずで滑らかになりますが、食感にざらつきがでて翌日には硬くなるのでおすすめはしないそうです。

生地にコシを出すためにも、残りのお水を足しながら約20分間根気よくこねることが大切!

約20分後、きれいなヨモギ色の生地ができました!!

耳たぶくらいのやわらかさがポイントです。

出来上がった生地の半分を細長くのばして5等分に。その後丸め、残りも同様にします。あんこも生地と同じ方法で10個作ります。(あんこを自分で作る場合は少し硬めのものを前日に用意しておきます。)

生地やあんこは最初に2等分すると作業がやりやすくなります。

2. 餡を包む
生地のお団子を手に取り、上からポンとつぶし、真ん中は厚いまま外側にいくほど薄くして5cmから6cmに広げ、真ん中にあんこを置きます。

ヨモギとあんこ、和菓子の良い香りが楽しめます。

あんこに沿って、生地を真ん中の厚いところから外側の薄いところへひっくり返しながら、よいしょ、よいしょと伸ばしていきます。伸ばすときは、生地を持った手で生地を伸ばし、もう片方の手であんこを生地に押し込み、これを交互に繰り返します。最後に閉じてきゅっとひねった後、真ん丸いお団子を作ります。全部丸め終わったら、食べるときにササにお団子がくっつかないよう、お団子に指で油を少し付けて手のひらで2~3回転がします。油はにおいが無くさらっとした米油などがおすすめ。たくさん付け過ぎると油臭くなり生地の表面も硬くなるので少量で良いそうです。

あんこを押し込んで、生地をのばす。押し込んでのばす・・・。

3. ササを巻く
ササを1枚、クキの付いている方を上にして表を自分に向け左手に持ちます。2枚目のササは真ん中の線を少し隠すように並べ、お団子を真ん中に置いてササを挟み込むようにします。ササは家庭で乾燥させて保存するのは難しいので、採ってきたらきれいに洗って水気を取り、ジップ袋に平たくのばして冷凍保存をしておきます。解凍するときは、水を張った大きめのボウルに30分ほど浸け、水気を払って使用します。

講座では、乾燥させたササを使います。

3枚目のササは少し幅の広いものを選び、クキのついている方を下にして上からかぶせて、上下各1回軽くひねります。

幅が足りないと巻けません。

そのままの状態で、お団子を持っている手の小指と薬指の間にイグサを下向きに挟みます。

イグサは小指から5~6cm以上出しておきます。

お団子の上の部分をイグサでくるっと巻いてキュッと締め、締めたひもを斜めに下ろして、同じようにくるっと巻きます。

ひもを斜めに下ろすときは、ピッタリさせず若干ゆるめに。

長いひもを真ん中のバッテンのところまで上げ、横向きにして少しきつめに2周巻き、時計回りに縦にしてもう一度結びます。左手の長いひもで大きな輪を右手の短いひもで小さい輪を作り、小さい輪を大きい輪の前から通します。通した小さい輪を左手に持ちながら、右手で長いひもを右にすっと引いて完成させます。

締めるときはしっかり締めて、ひもがほどけるのを防ぎます。

蒸した笹団子は吊るして冷ますので、5個ずつ束ねてから蒸し器に入れます。

束ねるときは、縦にしたものを3つ並べ、残りの2つを横にして根元で結びます。

蒸し器で約20分、蓋を取るとササのよい香りが辺りに充満。熱々の笹団子ができました。「講座を受講される方のほとんどは、熱がとれた後の笹団子ではなく、熱々の出来たてを食べて行かれます」と田中支配人。
田中屋本店さんでは昔ながらの製法を守り、添加物は入れずに製造しているそうです。笹団子はお餅なので、日を追うごとに硬くなるため賞味期限は4日と表示されていますが、ササには殺菌や防腐作用があるので、常温で1週間くらいは保存が可能だそうです。硬くなったら蒸したり、煮たり、焼いたり、電子レンジでチンすることでおいしくいただくこともできます。親しい方へ自分で作った笹団子を手土産にしたらすてきですね。

出来たての笹団子をぜひ味わいたい!

関連リンク

田中屋本店 みなと工房
新潟市中央区柳島町1-2-3
電話025-225-8822

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