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file-109 乙女が「かわいい」に目覚めた時代(後編)

 

生活の中の「かわいい」デザイン


 竹久夢二や蕗谷虹児(ふきやこうじ)などの挿絵画家が活躍し、少女雑誌のビジュアル化が進む中、付録もまたかわいい進化を遂げていきます。新年号の定番付録「すごろく」を始め、かるたやしおり、絵ハガキなどにも人気画家が力を発揮。そうした限定作品を求めて、少女たちが書店に殺到することもあったといいます。また、夢二は小さな自分の店舗で雑貨や浴衣を手がけ、虹児は便せんやレコードジャケットをデザインするなど、少女たちの生活の中に「かわいいもの」が浸透していきました。

小さな作品に込められたエネルギー

付録が少女雑誌の魅力をアップ

少女画報

姉妹仲よし双六「少女画報」 大正11年(1922)1月号付録

令女界

異国の友と 絵はがき「令女界」 昭和4年(1929)9月号付録

少女画報

「少女画報」表紙 昭和8年(1933)/妻・龍子がモデル

 大正時代の少女雑誌の付録は、すごろくやかるた、ハイカラなところではトランプなどの室内ゲーム、または、封筒や便せん、絵はがきなどの手紙アイテムが主流でした。
「特に、各誌とも新年号には趣向を凝らしたすごろくを付けるのが定番。いわばその雑誌の顔です。それを、虹児はデビューの2年後に任されています。いかに人気画家だったかが分かります」と、蕗谷虹児記念館の長谷川さん。
 新年号の付録らしく、遊び心やこだわりをふんだんに詰めこんだすごろくは、グラフィックデザイナーとしての虹児の才能も感じさせます。
「もともと緻密な線画を描き、細かなところまでこだわる画家ですから、しおりやかるたなど点数が多いときも、同じ絵は一つもない。すべてディテールまで丁寧に描き分けています。もったいなくて使えませんよね」  

 

 同記念館で開催中の企画展「蕗谷虹児 少女雑誌と乙女のふろく展」は、虹児作品に特化したコレクションを持つ「蒼の山荘 ギャラリー蕗谷虹児」による特別展示。実際に流通した雑誌や付録も幅広くそろう、貴重なコレクションです。  同ギャラリーがある神奈川県山北町は、蕗谷虹児が第二次世界大戦中に疎開し、その後10年間を過ごした場所です。その縁をきっかけに、10年前からコレクションを始め、今は約3000点を収蔵しています。    
マスクをとる

「マスクをとる」便せん表紙/生活の中のデザインに進出

馬車を追うバラ

「馬車を追うバラ」便せん表紙 昭和6年(1931)/物語性のある絵が人気に

 

 

アルルの女

ビゼー「アルルの女」のレコードジャケット 昭和12年(1937)頃(倉形興斉さん所蔵)

 オーナーの倉形興斉(くらかたおきなり)さんは、蕗谷作品の魅力を「多様性があって、非常に繊細。時代ごとに特徴があり、線の太さやタッチ、色使いなど絶妙です」と語ります。
「雑誌に比べると、付録についてはまとまった資料が少なく、記録もない。蒐集のよりどころがないので、ひときわ貴重な存在だと思います」
 今回の展示には、昭和25年(1950)に登場したポップアップ絵本も含まれており、時代による付録の変化や進化をみることができます。  

 

デザインで見る者を魅了

「虹児のデビューのきっかけを作った竹久夢二と、虹児には共通項があります」と語るのは、新潟県立万代島美術館の主任学芸員、池田珠緒さん。同館では平成19年(2007)に蕗谷虹児の大回顧展「魅惑の線、輝く色彩」を開催しています。
「ふたりとも展覧会画家でなく、作品が印刷されて多くの人の目に触れるという、大衆文化の中で脚光を浴びた画家だということです」  

 

小令女

出帆Ⅱ「小令女」大正15年(1926)9月号

花嫁

「花嫁」昭和43年(1968)/虹児70歳での作品

 虹児は、印刷された時に一番効果的に見えるように工夫をしているのだそうです。特に線画の緻密な線描は、モノトーンでありながら物語性や華やかさを漂わせて、見る人に迫ってきます。また、原画は無彩色のペン画なのに、白のまま残す場所を指定して印刷し、まるでカラーで印刷したかのように見せる方法も。白のコントラストで、絵に劇的な効果が生まれます。さらに、絵に花模様の枠と詩を組み合わせてページを構成するなど、「印刷されて読者のもとに届くときこそが、虹児作品の完成形です」と、池田さんは指摘します。
 虹児は雑誌の表紙絵や口絵、挿絵など用意された場で才能を発揮できる力を持っていました。「小さな作品に込められたエネルギー、完成度の高さ、細やかさは驚くほど。だからこそ、読者を魅了するのでしょう」と、池田さん。
 一方、夢二は、花や草木などをモチーフにした図案を考案し、それを用いた広告や宣伝、本の装幀なども手がけるなど、大正や昭和の乙女の心をくすぐる品々を生み出しました。
 同館では、3月4日(土)から「マリメッコ展」が始まり、その関連イベントとして4月23日(日)に「近代日本のかわいいデザイン-竹久夢二と杉浦非水を中心に」と題した美術鑑賞講座を開催します。非水はアールヌーボーに影響を受けた図案を発表した、日本のグラフィックデザイナーの先駆けです。
 今から約100年前の日本で、デザインされたもの、かわいいもので生活を彩ろうと考えた夢二や非水、虹児たちの挑戦。もしかしたらそれは、今の日本のかわいいポップカルチャーの原点だったのかもしれません。  

 

■ 取材協力
蕗谷龍夫さん/蕗谷虹児記念館 名誉館長
長谷川靜生さん/蕗谷虹児記念館
倉形興斉さん/蒼の山荘「ギャラリー蕗谷虹児」オーナー
池田珠緒さん/新潟県立万代島美術館 主任学芸員
作品画像提供/蕗谷龍夫 蕗谷虹児記念館

 

■ 企画展『蕗谷虹児 少女雑誌と乙女のふろく展』
開催期間 2017年3月20日(月・祝)まで
開催場所 蕗谷虹児記念館(新発田市中央町4-11-7)
開館時間 9時~17時(入場は16時30分まで)
休館日 月曜日(祝日の場合、火曜日)
観覧料 一般500円(400円)/高校生200円/中・小学生100円
    ※(  )は20名以上の団体料金
URL http://www.city.shibata.niigata.jp/view.rbz?cd=259&ik=0&pnp=14

 

小令女

ファブリック≪ウニッコ≫(ケシの花)、図案デザイン:マイヤ・イソラ、1964年 Unikko pattern designed for Marimekko by MaijaIsola in 1964

■ 企画展「マリメッコ展―デザイン、ファブリック、ライフスタイル」
開催期間 2017年3月4日(土)~6月11日(日)
開催場所 新潟県立万代島美術館(新潟市中央区万代島5-1 朱鷺メッセ内 万代島ビル5階)
開館時間 10時~18時(入場は17時30分まで)
休館日 3月13日(月)・27日(月)、4月10日(月)・24日(月)、5月8日(月)・22日(月)、6月5日(月)
観覧料 一般1,100円(900円)/高校・大学生900円(700円)/前売券(一般のみ)900円
    ※(  )は有料20名以上の団体料金  ※中学生以下無料
URL http://banbi.pref.niigata.lg.jp

 

■ 美術鑑賞講座
3月18日(土) 「北欧デザインの魅力」(課長代理・今井有)
4月23日(日) 「近代日本のかわいいデザイン―竹久夢二と杉浦非水を中心に」(主任学芸員・池田珠緒)
14:00より 万代島ビル11階NICOプラザ会議室 聴講無料 申込不要、先着60名

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