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file-110 歴史を感じながら、新潟の町屋巡り(後編)

 

観光資源としての町屋


 妻入り、平入り、丁字型と様々な様式の町屋が混在する新潟県。町や地区などの単位で見てみると、その建て方に法則性や特徴があります。城下町の村上と高田、中ノ口川沿いの白根、海に面した湊町の出雲崎、塩谷など、町屋が多く残る地域を巡り、そこから見えてくる歴史や文化、また災害や豪雪を克服してきた先人の知恵を、地域の町並みづくりの活動とともに紹介します。

城下町と湊町を巡る

越後の北と南の城下町

平入りの町屋

平成27年(2015)に完成した、平入りの町屋/村上市

 村上藩は江戸時代、製茶や鮭漁が盛んな、越後最北端の藩でした。平成の今、村上市内では、お茶や塩鮭、地酒の販売、染め物や鍛冶、木彫堆朱の工房など江戸時代から続くものから、ブランド牛の村上牛専門の販売店、カフェ、体験施設など現代の店舗までもが、平入りの町屋で営業中です。また、現在でも平入りの町屋で暮らしている人もいます。今では春の風物詩となったイベント「町屋の人形さま巡り」では、約80軒の町屋でひな人形など約4,000体のお人形さまが展示され、多くの観光客が訪れます。  

 

益田茂彦さん

今は空家対策にも乗り出しています/益田茂彦さん

「町並みがここまで再生するのに、20年かかりました」とむらかみ町屋再生プロジェクトに立ち上げ時から関わってきた、益田茂彦さんは言います。かつて、郊外のロードサイドに大型スーパーが進出し、また県道の拡幅事業で古い町並みが壊されようとしたとき、若い商店主たちが、村上を個性ある町によみがえらせようと決意。一口3,000円の会費を集め、それを町屋の外観再生の資金にしたのです。「町屋に目を付けたのは、東京からUターンして、村上の古い町並みが他にない個性を持つことに気づいたこと。そして、地域の中で競争するのではなく、他から集客して地域全体で元気になるには、観光だと思ったから」と、益田さん。人によって温度差があり、地域の合意を得るには時間がかかりました。説明し、説得し、外観再生で生まれるメリットを実際に示し、18年間で34棟の町屋を再生。今では、春と秋のイベントでは、町屋の内部も公開され、江戸や明治にタイムスリップしたような経験もできます。「昔の家だから、不便なところもあります。でも、それを楽しめばいいと思うんです。床のきしみは座敷わらしの足音とかね」。益田さんの店舗兼住宅も、昭和初期に建てられた平入りの町屋です。店舗前のレトロな赤いポストも、もちろん現役。村上郵便局の粋な計らいです。  

 

上越市高田地区

江戸後期に建てられた旧今井染物屋/上越市高田地区

 一方、越後の南に位置した高田藩は、交通の要所、北国街道をメインストリートに持ち、また、日本有数の豪雪地帯にあり、それが町屋にある特徴を持たせています。平入りの一階の軒を延ばすようにして、雁木(がんぎ)が設けられているのです。雁木とは、町中が雪に埋もれる冬期間、歩道空間を確保するために作られた和製アーケードです。高田地域(現・上越市)ではそれが16kmも続き、日本一の長さと言われています。平入りの屋根のラインと、雁木のラインが平行して連なって、遠近感が強調された風景は、高田ならでは。同じ城下町でも個性はそれぞれです。
 旧今井染物屋や旧金津憲太郎桶店はともに江戸時代に建てられた町屋。このエリアには、職人の町屋が集まっています。内部見学のできる町屋もあり、江戸時代の職人の仕事や暮らし方を体感することができます。  

 

妻入りが連なる在郷町

新潟市南区(白根)

町屋が11棟連続して並ぶ、県内では貴重な町並み/新潟市南区(白根)

 中ノ口川と信濃川に囲まれ、江戸時代から舟運(しゅううん)によって栄えた白根(現・新潟市南区)には、今も、町屋が多く残っています。「町屋が残存する割合で言うなら、新潟県でも上位ではないでしょうか。」と、説明してくれるのは、みちLab.の加藤さんです。約2kmの通りに沿って、主に妻入りの町屋が立ち並んでいます。丁字型、また、妻入りの前面に看板のような外壁を付けた「看板建築」も混ざり、バリエーションに富んでいます。
「この界隈は、昭和6年(1931)の大火で多くの町屋が焼失し、その後一気に再建したのですが、一度に建てたからこその特徴的な工法が見られるんです。両隣の家で壁を共有する『出し合い』です。長屋とはちょっと違って、一階だけの共有だったり、境界には互い違いに押し入れを設けるなどして、防音の工夫をしたり。白根の町屋の特徴の一つです」と、加藤さん。  

 

本間初美さん

昭和初期の町並みをご案内します/本間初美さん

 しろね大凧タウンガイドの本間初美さんは、「伝統的な建築物が残る町並みが残っていても、地元の認知度はまだまだ。まずは知ってもらって、保存し、観光資源として活用していかなければ」と言います。ガイドは今、7名。養成講座で勉強中の4名がもうすぐ加わり、周知活動を盛り上げる予定です。  

 

村上市塩谷

町内のほとんどが妻入りの町屋/村上市塩谷

 同じように、荒川河口の右岸に位置し、北前船の寄港地として発展してきた塩谷集落(現・村上市)。妻入りの町屋が軒を連ねる町並みを保存しようと、平成16年(2004)から、展望台を整備し、町屋散策ツアーを定期的に開催するなど、地道に住民が活動を続けてきました。平成28年(2016)には、町屋7棟が国登録有形文化財に登録され、さらに活動が加速しています。「こうした動きがもっと各地で起きて欲しい」と、新潟大学都市計画研究室の岡崎篤行教授。「現在、新潟県で、重要伝統的建造物群保存地区に選定されているのは、佐渡の宿根木だけです。この指定を一つの目標として、地域で取り組んでいただきたい。新潟は町屋の宝庫、素材は十分にあります」  

 

出雲崎町

3.6km続く、奥に細長い妻入り町屋/出雲崎町

 北前船の寄港地ということで、塩谷はよく出雲崎と比較されますが、同じ妻入り町屋でも塩谷の方が間口が広く大型です。3.6kmに渡って妻入りの町屋が並ぶ出雲崎も、新潟の町屋を代表する、おなじみの風景です。出雲崎を含め、間口が狭く奥行きが長い敷地の理由は、「税金計算の基準が間口の長さだから、と、まことしやかに言われていますが、それは俗説。そもそも区画割を許可するのはお上で、税金が少なくなるようにするとは思えません。敷地の形は都市計画で決まります」と、岡崎教授。
 まずは、出掛けて自分の目で見て、歴史や文化に思いを馳せてみてください。すると、地域ごと、時代ごとの特徴に込められた何かが見えてくるかもしれません。  

 

■ 取材協力
益田茂彦さん/むらかみ町屋再生プロジェクト 事務局
本間初美さん/しろね大凧タウンガイド 副会長
加藤健二さん/みちLab. 副代表
岡崎篤行さん/新潟大学工学部建設学科建築学コース都市計画研究室 教授
上越市 自治・市民環境部文化振興課
塩谷活性化推進協議会
出雲崎妻入りの街並景観推進協議会

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